梅雨寒し寝返りを打つ夜の孤独 寥茶
魔性めく儚き命芥子崩る 瑶星
海開き処理水不安過ぎる浜 梅香
真夜中の警報哮る暴れ梅雨 青果
路線バス尾灯滲ませ梅雨に入る 桂花
健やかに生きたし余生星祭る 紫芳
油照り地震の断層残る町 希瑛
夜店の灯望郷募る下駄の音 柊花
休眠の原発稼働危惧の夏 禾穂
解禁の鮎に始発の駅舎混む 毬衣
世の無情猫の骸に半夏雨 翠風
初夏の峰雲行き交いて旅情湧く 良子
鰻焼く匂いのこもる魚市場 順子
繋留の船軋めきて日雷 礼子
釣り上げし若鮎光り空を舞う 一和
鉄線花生命の限り咲き終えり 藤花
保護色の鹿の子の脚ぎこちなく 巴
秋簾外されぬまま空き家荒れ 瑞木
花魁の色香放ちて貌佳草 直子
金魚死ぬ手作り墓碑の幼き字 双葉