台風禍人知術なき畑の貌 瑶星
面を打つ声の鋭き寒稽古 雅彦
秋灯下捲る遺句集文字潤む 青果
冬銀河遅延の列車待つホーム 花楓
戦火無き国境願う冬の使者 義景
師の母校健児の塔の空高く 真帆
それぞれの孤愁引き摺る秋の蟬 紀歩
師の遺影涙に咽ぶ夜長の灯 禾穂
舟渡御の旗厳かに神の島 琴音
香煙に師の影偲ぶ紅葉寺 青穂
暮れ際の光りを孕む花薄 翠風
落ち鮎の漁の消えゆく砂利採取 淳風
耐えて散る楓紅葉の音も無く 希瑛
円安に生活(たつき)厳しく冬に入る 昭子
出航の汽笛の鈍し冬の海 葉子
貼り替えし障子明かりに心満つ 和子
作業服集う屋台のおでん鍋 佐和江
そぞろ寒家計に迫る物価高 野乃花
雨曝し朽ちて独居の秋簾 葉苗
秋立ちぬ閉店のビラ垂れしまま しのぶ