大西日鉄塔の翳田を圧す 寥茶
隠棲の女院の庵落とし文 照葉
凡庸に生活(くらし)を重ね秋初月 雅彦
裏金の論争晴れず返り梅雨 瑶星
戦乱の夏に五輪の夢燃ゆる 義景
梅雨出水救難ヘリを待つ災地 青果
日差し濃き墓前に畳む秋日傘 相月
合歓の花落城伝う夫婦歌碑 花楓
夏至の日の逢う魔が時のカフェテラス 葉子
明け早し畑に動きし祖父の背 紫野
虹立ちて五輪へ大き夢描く 葉苗
崩れゆく花容さらしぬ貌佳草 翠風
星祭り時代を映す子等の夢 琴音
港湾の摩天楼浮く夏霞 毬衣
走り梅雨繕う夜の針軋む 柚果
宵祭り慕情昂る下駄の音 万知
炎天下鉄路這いゆく一両車 ふみへ
白壁の崩れて空き家虫集く 一葉
継ぐ子無く農事見直す芒種の日 瑞木
夕焼けの中に散りゆく野球帽 礼子