初漁の夢滾らせる波頭 青果
法廷の静謐を裂く鰤起こし 雅彦
政争の熾烈なバトル風疼く 楊花
寒造り無形遺産の技を継ぐ 相月
政権の行く手の険し秋の霜 真帆
罹災地に戻る灯乏し冬に入る 桂花
再興の術なき里の木守り柿 希瑛
爆心地献花に黙す暑き秋 紫野
秋の旅ランチのワイン腑にやさし 紫芳
名湯の街の廃れて秋時雨 翠風
庭の隅寒菊香る刻豊か 柚果
空洞化進む商都に冬立ちぬ 瑞木
父母偲ぶ古きアルバム秋灯下 野乃花
夜学の灯消して星座を愛でる窓 國子
防犯のセンサー光る冬の闇 葉苗
長き夜遺品の時計秒刻む 一葉
半寿なり席譲られる小六月 昭子
刀剣の銀(しろがね)の示威冷まじき 紅蓼
雲居より出でし満月一人旅 弘美
地震の地の棚田耀う秋の彩 百花