豊漁の兆し轟く鰤起こし 雅彦
蘇る師の影過る芭蕉の忌 瑶星
シャッターを閉じて老舗の冬厳し 桂花
雨止みて虫の音凛と貫きし 清影
介護終え一刻和む星月夜 勝子
兵士の家郷恋うる碑秋寂し 希瑛
宮の杜雅楽鎮めて落ち葉舞う 千鈴
秋暑し貧土鍬振る力失せ 紅蓼
休暇果つ気怠さ乗せる始発バス 毬衣
秋の空掃き目の清し白き雲 ふみへ
秋の浜浸食止まず閑散と 國子
冬霧の赤字路線の駅昏し 葉苗
懸崖の菊幽谷の風情満つ 佐喜子
ガス灯に烟る思い出暮れの秋 藍
秋の暮れバス待つ人の白き杖 野乃花
陸橋を渡る園児と鰯雲 茂子
マンションに小さき注連縄雀来る 圭子
芒伸ぶ軍用基地の黙深し 洋子
古里に身寄りなき身の秋侘し 弘美
冬立ちて戦火の絶えぬ異国の地 瑞木